摩天楼の怪人
あらすじ
ニューヨーク、マンハッタン。高層アパートの一室で、死の床にある大女優が半世紀近く前の殺人を告白した。事件現場は一階、その時彼女は34階の自室にいて、アリバイは完璧だったというのに…。この不可能犯罪の真相は?彼女の言うファントムとは誰なのか?建築家の不可解な死、時計塔の凄惨な殺人、相次いだ女たちの自殺。若き御手洗潔が摩天楼の壮大な謎を華麗に解く。
登場人物一覧
1969年
ジョディ・サリナス：大女優
フィリップ・サリナス：ジョディの養子
リサ・マリー・ワシントン：女優
アダム・カリエフスキー：ジョディの主治医
ジョン・サクソン：元劇団オーナー
ジェイミー・デントン：劇作家、記述者。
ロイ・ウィザースプーン：コロンビア大学教授
ミタライ：コロンビア大学助教授（准教授）
1916～21年
ジョディ・サリナス：女優
フレデリック・ジークフリード：オーナー
パンドロ・サンドリッチ：ジークフリード・エンタテイメントプロデューサー
オーソン・タルマッジ：セントラルパークタワー設計者
イルマ・ブロンデル：女優
メリッサ・ベイカー：女優
ハワード・スミス：セントラルパークタワー管理人
ウォルター・フック：10階建てアパートの住人、記述者（時計塔）
バーナード・ワイゼンスキー：セントラルパークタワー25階の住人
サミュエル・ミューラー：NYPD、記述者。
ジョン：リーヴェン：NYPD
二章終わりまでの整理を続きで。ネタバレなので見ないでね。
ヒエログリフはまだわからず；
たぶんだけど、1921年と現代との解読にズレがあるんだと思う。そうなら御大ガチすぎる。
まずは時系列順に事件と被害者を並べてみよう。
1916年7月31日 メリッサ・ベイカー自殺
セントラルパークタワー3504号室の自宅、浴槽にて胸を撃ち自殺していた。歳は30くらい。
1916年8月14日 イルマ・ブロンデル自殺
3604自宅リヴィング・ルームでこめかみを撃って死亡。
ワンピースで帽子を被っていた。
右手の指先に黒く煤がかかっていて銃を撃った事は間違い無さそうだった。
エンフィールド銃はバレル以外をストッキングで被っていた。
壁の一箇所に弾丸がめりこんでいるらしい小さな穴があった。
隣人の3603号に住むグロリア・オースティンの聞き込んだところ、最初に何かが倒れた音がきこえ、その後二発の銃声が鳴ったとのこと。銃声の間隔は2,3分間があった。
1921年9月5日 パンドロ・サンドリッチ事件
雨の夜だった。
時計塔の長針に刃が取り付けられ、頚部を切断される。パンドロは午後3時に3604号にいて電話で話をしたとジークフリードが証言している。ジークフリードが嘘をついているかはわからないがその必要性は皆無に近い。
時計塔の仕組みをついでにここで。
長針は一分毎に進む。
毎時15分になると一分間だけバーが出てきて長針を支える。この一分間で長針の上を歩き屋上に行くための橋渡しになる。
この事件を機に時計塔が撤去される。8日の夜明けともに行われ、ハリケーン到来の恐れのため作業は急ピッチで行われ、一日で完了したが、文字盤中央に１ｍちょいの丸い穴は開いたままになっていた。
1921年9月10日夜8時ごろ セントラルパークタワーの窓が破砕、オーソン・タルマッジが死亡。
3階以上の窓が全て消滅。オーソンのポケットにヒエログリフのメモがあった。
ハリケーンは到着していた。
1921年10月3日夜、フレデリック・ジークフリード殺害事件
マンハッタンにハリケーンが上陸し、PM8時半に大地震が起こり停電していた。
犯人ジョディ・サリナスは34階に居たが１階に居たジークフリードを至近距離から銃殺した。彼女の空白のアリバイは9時から9時15分の15分間のみであり、死亡推定時刻は9時から11時の2時間、停電が起こっていたのは8時から10時50分であった。
窓は手前７インチしか開かない。エレベーターは停電により使えない。階段で上がり降りする猶予は無い。
ジョディの話では、「よく映画にあるでしょう？両手を前にあげて歩いていくと、どんどん壁を抜けて、遥かな野原に出るの。そこは34階下の１階だった。四次元トンネルをくぐって、一瞬のうちに」魔王の力を借りて彼女は犯行を為した。
ジョディは魔王の雄叫びを聞いた。停電の闇の中、表の豪雨に挑むような。
1969年10月6日午後4時40分頃 カリエフスキー死亡。
3402号に棲むカレン・ブラックが異音を聞いた。
まずものが倒れるバタンという音。それから大声、そして銃声に似た二度の異音が続いた。
その後、ドアの魚眼レンズを覗いていると、左から右に奇怪なものが通って行った。
頭蓋骨むきだしで白髪でざんばら髪、黒スーツ着て痩せて背は高かった。
午後5時10分すぎに夫が帰宅し、隣家を見てもらうとカリエフスキー医師が胸を二発撃たれて殺されていた。
推理
メリッサ・ベイカーは自殺。根拠は自殺に不審な点が見られない事と彼女の死によって利益を得る人も存在しないから。
イルマは他殺。こみかめを撃ったのもおかしいし、隣人の証言がカリエフスキーと状況が酷似している。
オーソンは自殺。建築家としての信念に殉じた様に思われる。ストーリーはシンプルな線がいくつもあり、複雑に絡み合っていて、難問に見えるだけだ。
一番奥のエレヴェーターは用務員用であり、これのみが時計塔へ行く。また内部はドアの手前に溝がある。
■ファントムが登場する記述を時系列で整理する。
1916年9月2日 ジョディ21歳の誕生日の夜
熱を出し寝ていた。
ふと目を開けるとファントムがベッドサイドに立っていた。薬を飲まされ、目が覚めると小さな船に乗り、水の上に浮かんでいた。ファントム曰く、セントラルパークの公園で他人には絶対見つからない場所らしい。
イルマ・ブロンデルが死んだと言い、マスクの下の唇を不適に歪め、笑っていた。
ジョディは眠りから覚めるともと通りベッドの上だった。
1921年9月7日
また高熱に出し、医者から注射を打ってもらい眠っていた。
するとまたファントムがあらわれた。
ファントムはまた薬をくれ、眠りについた。この時のファントムは苦しそうで話すのが辛そうだった。
気づくとまたリザーヴァー池の上でボートに乗っていた。この夜もまた霧が深く、周囲の背の高い草の中には篝火が点々と燃え、その彼方には、摩天楼の窓の明かりがぼうと霧に沈んでいた。
ファントムのマスクは前回のもとと違っていて、口元だけではなく、かおの左半分をすっかり覆うものに変わっていた。
パンドロ・サンドリッチは死んだ、と彼は暗い声で私に言いました。
ファントムはジョディの舞台を何度も見ていると言い、絶賛しました。
ジョディ、誰か今邪魔者はいるかい？そう彼に言われ、マーガレット・エルグと答えた。
ファントムは君が死ねば僕は生きていけないと言っている。
1969年10月3日夜7時59分 ジョディ・サリナス死亡
窓にファントムがあらわれた。左半分は頭蓋骨が露出していた。体はなかば透き通っていた。
ジョディがリザーヴァー池の行ったという確たる証拠が見つかった。7日の宵に着ていたネグリジェを法医顕微鏡捜査官が徹底的に調べたところ、ジルコニア、ウッドソレルという草の繊維、ブラックベリーの実の皮質、そしてこれの汁などが出てきた。ジルコニアを含む土壌はマンハッタンではセントラルパークの土にしか無い。
推理
ジョディが死んだ後にカリエフスキーが死んでいる点が興味深い。
ファントムが薬を持っている点も考慮すると、カリエフスキー医師＝ファントムな気もしてくる。
ジョディが肝硬変になってしまったのはカリエフスキー医師が仕事を怠っていたわけではなく、輸血によりウイルスが入り、肝硬変になってしまったという方が蓋然性は高いと考えられる。
ファントムではないと否定できるとしたら、カリエフスキーは結婚していて嫁が死に遺産をもらっていてお金持ちであることだと思う。
ファントムはジョディだけを熱烈に愛し求婚をしたのにこれはちょっとおかしい。
しかしまあこれもそんなに強く否定できる材料であるとも思えないけどね。
PR
