わずか十ヶ月間の活躍、突然の消息不明。写楽を知る同時代の絵師、板元の不可解な沈黙。錯綜する諸説、乱立する矛盾。歴史の点と線をつなぎ浮上する謎の言葉「命須照」、見過ごされてきた「日記」、辿りついた古びた墓石。史実と虚構のモザイクが完成する時、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。
島荘信者だから言っちゃうけど、大傑作です。
現代パートの事を考えると未完ですが、未完のままで大傑作だと思う。
写楽が本筋じゃなくて裏でストーリーあってラストで大どんでん返しがあったら…なんて途中震えながら読んだけど未完で終わって助かった、そんなことされたら死人でちゃうくらいの傑作。
けどまあ、勘違いされても困るので一応書いとくけど、小説的な面白さ、娯楽のような面白さではなくて、学術的な面白さです。
「この説が真実であったなら歴史が覆る」という新説を閃いた主人公の気持ちになって読むとドキドキが止まんなくて熱中しちゃいます。結論にたどり着くまでに共に一喜一憂してしまう。
江戸パートは挿入話ですが相変わらずの筆力です。用語も江戸の世界観もよく解らない現代人のためにもある視点が用意されているところは天恵さえ感じる。ここまでくるとこの説は天啓だ、と思うわけで当たってるんじゃないのっとしか思えませんね、なんせボク島荘信者だし。
研究を最後までせずに連載を始めていったせいか論理の過程が非常に解り易く丁寧です。秋吉事件の上申書を思い出した。今度三浦和義事件読んでみよっと。
それにしても出せば出すほど傑作が増える凄い小説家である。
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